雑然ワークス

プレイレポートを適当に。だいたいうろ覚え、内容はあやふや、台詞は捏造。

【迷宮キングダム】神聖ローマランドvs暴帝の訓練場その2

 我々こそが何がローマかを裁定するのだよ。
 すなわち。
 すなわち我々こそが。
 すべてのローマの祖、精髄なるものと言っても過言ではない。
          ――――元老院、語る

 
 
 
 宮廷は中途半端に遠い暴帝の訓練場に向けて進路を取った。
 どれくらい遠いかというとだいたい王国マップ4つ分くらいである。
 道中配下の数人が逃げ帰ったりうっかりダメージを受けたりしたような気もするが、GM的にはあまりおもしろくなかったのでここでわずかに触れるのみとする。
 
 面倒な道のりを、しかし宮廷は危なげなく乗り越えた。辿り着いたのは暴帝の訓練場。
 細長い道の先に繋がったその一部屋目に、ランドメイカー達はどうどうと踏み込んだ。
 途端、ドサリと生肉をまないたにたたきつけたが如きサウンド。そこに目を向けたパルムはその口元を覆った。
 
「同胞に対し何たることを……」
 
 その言も当然のこと。落ちてきたのは訓練されていたと思しき新兵である。
 新兵は落下の衝撃で既にdying。斯くしてランドメイカー達の視界の右上に部屋の名前がポップアップ。
 『千尋の谷底』
 おお! 獅子は自らの仔を千尋の谷に突き落とすというがその谷底がそれなのか!
 重すぎた期待は新兵を容易に死体に変換。どうにもならない垂直落下。しかしローマを背負うものであればその程度生き残らなければならないのか。
 
「むしろスパルタとかなんじゃないのコレ」
 
 明哲の国王スサノオが呟いた言葉は場を震撼させた。我々は、彼らはローマなのでは? アイデンティティの喪失とそれに伴う耐えがたき孤独感が生み出されたが、ローマもスパルタもあんまり変わんないですよという暴言によって全ては解消された。なお、それを口にした民は素晴らしき仮面の導きにより矯正済みです。
 
「軍備を整えていると言ったが、これではむしろ減っていそうだな」
「これだけのことをしてもまだ数を揃えられると考えたほうがいいのではないでしょうか」
 
 周囲を見渡せば、今落ちてきた兵士ばかりでなくいくつもの死体があちこちに。
 訓練場の出入口はここだけなので、即ちお出かけの際には敗残者の死体達がお見送りなのであった。
 玄関にダストシュートめいた新兵訓練装置とは名ばかりの処刑装置の出口を配するマクシマス三世は果たして正気なのか?
 宮廷一同げんなり顔である。
 そんな中、心優しき聖職者ポテト・ザ・バロンが一歩前に出た。
 手には仮面。読者の皆様においてはそれが葬礼用の仮面であることは明白であろう。
 
「たとえアナザーローマとは言えローマ。弔ってやろう。……ムッ!」
 
 近づきかけたバロンはその神官的直感によって立ち止まり神官的戦闘姿勢を取った。
 何故か? おお、見よ! 倒れた死体のうち幾体かが起き上がりはじめたではないか!
 これは【死にぞこない/Zombie】に【歩きドクロ/Skeleton】。その反自然的邪悪生命力をバロンは嗅ぎとったのだ!

 バロンが王国フェイズで信徒を送り込み、迷宮を調査しておいたこと、ならびにこの部屋にモンスターが5体配置されていたという情報を得ていたことにはここでは特に触れないでおく。
 
 この部屋に配置されたモンスターのうち、死にぞこないは厄介である。 このモンスターが持つ【死ねない体】はHPをちょうど0にしなければ死なないという厄介極まりない能力。ずるずると続く戦いに宮廷たちが疲弊することは必至と思われた。
 だが。
 しかし。
 
「腐っても元同胞です。……すぐに楽にしてあげましょう」
 
 パルムが手にしたウェポンは【戦鎚】! 凶悪なデザインのこのハンマーは的確に3点のダメージを与え死にぞこないに確実な死を与えるのだ。
 ……後のことは語るまでもないだろう。
 前衛となった死にぞこないを盾に本陣の歩きドクロが遠隔攻撃を続けるというプランは一瞬で壊滅し、斯くして戦闘は終わった。
 GMの慟哭は果てなく、共鳴したその地の怨霊たちも怨嗟を轟かせたがバロンの手によってすべて浄化された。
 
「歩きドクロから【お弁当】が採れたよ」
「それは本当にお弁当ですか?」
「死体産か……ちょっと不安だな」
「ああ、大丈夫。賞味期限まだ切れてないから」
 
 国王の鶴の一声にパルムとバロンも納得。
 和気あいあいと食事が取られ、斯くしてこの1ターンは飢える心配がなくなった。
 更に休憩を少々、パルムが敵意を取られて民の声が回復したりしたが恙無くキャンプは終わり、次の部屋へ移ることに。
 
「東と南、どっちに向かう? 東はどうやら人が多そうだ。南は……あまり気配はないな」
「東の方は戦えそうなのはいないんだよね?」
「そういう報告を受けている」
「じゃそっちで。戦えそうなのがいないほうがいいし」
 
 国王の決定は迅速であった。
 宮廷一同東に向けて歩を進める。
 狭い通路を進んでいくと、ざわざわとした賑わいが近付いてくる。
 通路の向こうに明かりが見えてきた、とその時に、不意にバタバタと近付いてくる気配。
 見れば数人のローマ市民が慌ただしく走り寄って来るところであった。
 
「もう無理だァ! これ以上は死んじまうよう!」
「まだ死にたくねぇ! つーか厳しすぎだろ訓練!」
「おお、そこを行くはランドメイカーの雰囲気を漂わせるローマ人! ここであったは天恵か! お国に亡命させてくだち!」
 
「トラップかな」
「トラップですね」
「いわゆる【難民】というやつか……」
 
 たちまちのうちに宮廷はその一行の正体を喝破した!
 彼らは【難民】。国にやって来てくれるが同時に施設を破壊して勝手に住居を作る厄介者である。
 あやうし、このままでは元老院や温泉に被害が出てもおかしくはない!

 そんな彼らの前に躍り出たのはバロンである。
 
「諦めてはならない。ローマの民よ」
 
 バロンはその表情に満面の笑みを作り*1、彼らに向かって説教*2を始める。
 バロンの言葉は彼らの凍てついた心を解きほぐし、まだここで頑張ろうと言う気力を思い起こさせた*3
 斯くして彼らもまた宮廷と共に次の間へと。
 
 次の間は食堂であった。
 兵士になるための訓練を施されているローマ的人々が様々なことを語り合いながら食事を取っている。
 彼らの救いはただこの一時。過酷な訓練から解き放たれる祝福の時である。
 
「うおォん、俺はまるでローマ火力発電所だ」
「モノを食べる時はね……」
「自由でなんというか……」
「訓練から救われてなきゃあ……」
 
 独自言語を駆使して食事を取る訓練兵達。彼らは食に没頭しており、宮廷のメンバーを気にする様子もない。
 ローマ焼肉、ローマ生姜焼き、白パンにビールにアワビにフラミンゴ。旨い。匂いだけで、雰囲気だけで旨い。
 
「これもトラップだな」
 
 バロンが断言した。その通り、【遭難】のトラップである。ここでゆったり過ごせば最早矢も盾もたまらず飯を食わねばならないという欲求に突き動かされることとなろう。
 こっそりディスプレイの右上に表示された部屋名は『蟲毒な食堂』。
 
「じゃー休憩はなしで!」
 
 皆食事は取ったばかりである。マリーの発言に誰も逆らうこと無く、休憩無しが決定された。
 GMの顔にのみ悲しみが浮かび、食卓の声はなお続き、ひっそりと先の【難民】が平穏な生活、素晴らしい食事、決まった休暇などで【民】としてバロンの配下に加わった。
 迷宮はなお深く、先はまだ長いのであった。

*1:仮面で見えません

*2:宗教的な意味で

*3:【神の指】を使用してトラップを無効化した。