雑然ワークス

プレイレポートを適当に。だいたいうろ覚え、内容はあやふや、台詞は捏造。

【D&D5e】ファンデルヴァーの失われた鉱山。その2回目(前半)

鉄は熱いうちに打てと申します。
というわけで私のこのうっかりな脳髄が記憶を揮発させぬうちに備忘録を残しておきましょう。

ファンデルヴァーの失われた鉱山第二回をプレイしました。
以下はネタバレを含む内容となります。

冒険者たち
○アレッサ・グランツシルト
戦の神の突撃神官の貴族令嬢。
自分(含む仲間)に手を出した輩には畑の塩を撒いても良いと思っている。

○クラウス
ドラゴンボーンのパラディンドワーフの友人を気に掛ける元一般人。
おそらく一番の常識人。

○ルゥナ
辺境出のハーフエルフのヘクスブレード。
暴力の行使に躊躇がない。

○アルドエット(通称アル)
ノームのアーケイン・トリックスター
手堅い動きに定評がある。

 

 


ファンデルヴァーへの到着から明けて翌朝。ストーンヒルの宿屋は既に賑わいを見せていた。
そこに冒険者達が出てくると、誰も彼も興味深げに様子を窺ってこのよそ者達を好意をもって出迎えた。
彼らが店の主に茶を供されると、この珍客達に向かって町の住人達はよってたかって声を掛けた。
曰く、冒険者といえば果樹園のエダーマスさんも昔冒険者をやっていたらしい、困ったことがあるといつも助けてくれるとか。
曰く、オーク退治を引き受けるために来たのなら町長のところに行くといいとか。
曰く、赤印組には気を付けろ、最近も木彫り職人が殺されて妻子は行方不明になったとか。
曰く、土地のことはレンジャーやらドルイドやらの専門で、農園のオールダーリーフさんの友だちにドルイドがいるらしいとか。

要するにクエストだか情報収集の手がかりだとかの集合体である。
ワッと情報を浴びせられた冒険者たち、それぞれ如才なく対応して話を切り上げ、顔を突き合わせてまずどう出るか算段した。

ひとまず手分けして情報収集し、それから指針を決定しようとの話となり、彼らは三々五々町の中を行くことになった。

ノームのアーケイントリックスター、アルドエットはかねてからの予定通り、この街に幸運の神タイモーラの社を営むエルフのシスター・ガラエルのもとへ向かった。
というのもこのシスターもハーパーの一員であり、アルがこの地に向かう理由にはこのシスターが上からの命令に難儀しているというのもあったのでした。

社に向かうと速やかにハーパーエージェントを示す合い言葉が交わされて、流れるようにシスター個人のお家訪問と相成った。

若干やつれて傷もある、お疲れの様子のシスターが言うことには彼女に課せられた使命は一つ。
トライボアー街道をさらに東、森の中に潜むアガサと言うバンシーから聞き出さねばならない情報があるという。
そのために贈り物としてお高い櫛まで用意したものの、何が気に入らないのかシスター・ガラエルが向かってもバンシーは姿を現さなかったのだという。
なお、その成果のない往復行の結果が彼女の怪我やら疲労である。
「アガサからある呪文書の行方を聞き出せたなら報酬をお渡しします。手付けとしてポーション・オヴ・ヒーリングを1本お渡しします」
「すぐにとは行きませんが」

このクエストが本筋の進行と直接的な関わりのないサブクエストであることを確認し、持ち帰り対応を決行。なんとなれば本編終了後に軽く回るくらいのつもりである。
とは言え目的のバンシー、厄介な輩に違いは無いがどうやら占いに長け、物探しも得意という。いざとなれば前回ドワーフが連れ去られた先、ゴブリンどもの本拠地、すなわちその名をギザ牙城の位置を聞き出すことも可能であろう。
最悪そのために向かっても良いな、と至極冷静な判断をくだし、立ち去ろうとしたところで。

「ところで昨今この街を荒らす赤印組ですが、彼らの専横が続くようなら近いうちにハーパーが動くことになるでしょう」
「……まだ動くべきではないと?」
「ハーパーが旨とするのは密やかに動くこと、表立たぬことです」
「そうですね。ですが連中が無謀なことを続けるなら、先に善意の冒険者たちとぶつかって勝手に潰れるでしょう」
「そうなれば、タイモーラの神官としてはその冒険者達に出来るだけの支援を送ることになるでしょうね」

要するに赤印組を倒すなら支援しますよということである。
こういうやりとりいいよね! ひとしきり浸ってシーンはしめやかに閉じられた。


続いてクラウスが向かった先はオールダーリーフ農園。ハーフリングの女主人の農園である。
ドラゴンボーンの冒険者が農園に近付くと、まず女主人ケリン・オールダーリーフがそれに気付いて彼を出迎えた。

「あなたの友人というドルイドに話を聞きたい。実は俺の友人がゴブリンどもに連れ去られ……」
斯く斯く然々前回の冒険について語るクラウスに、農場主は申し訳なさそうな顔になる。
「そんな話なら力になりたいところだけど、あいにくドルイドのレイドスはいまこの辺にいないんだよ。この時期はいつもサンダーツリーってところに行っててね」
そこに向かえば話も聞けるだろうとはいえ、なんとこのサンダーツリーは冒険者達のホームタウン、すなわちネヴァーウィンターの方が近いという。

えっ片道3日掛けて来たのにそこまで戻らなきゃいけないの……?という不安顔。
ひとまず馬か何かを借りられればもっとはやいよ! 来るときは牛車だったからね! 確実安心のドルイド印ですよ!
DMの心優しいかけ声にクラウスも元気を取り戻し、レイドスなるドルイドのことを心に刻み込んだ。
なんでもサンダーツリーは過去に廃墟となった町でアンデッドやら植物の怪物やらが出るという。というわけでドルイド氏はそういうのが這い出さないように管理しているのだとか。
そう言うたぐいの人物なら信頼も置けようと、クラウスも納得。

ところでクラウスがケリンさんと話をしているあいだ、少し離れたところでうろちょろと興味を向けるのはハーフリングの少年、ケリンさんの息子のカープである。
話が一段落したところでちょこまか近付いた少年はクラウスの鎧やら武器に憧れもあからさま、触ってはいいかと問いかけて鎧にペタペタ、鞘にペタペタ。
「おれもいつか冒険者になるんだ!」

クラウス、ドラゴンボーンの表情の少ない顔に悲しみを浮かべて。
「坊主、平穏な生活があるならそれを手放す必要はないんだ」

家族を失い必然として冒険者となったパラディンの哀しみであった。

しかし少年ハーフリングにはそんなもの通用しない。よくあるお小言と受け取った彼は唇を尖らせてそこから走り去った。

「うちの子、あんな風に冒険者になりたいなりたいって……お客さんにもすみませんね。こないだなんかトレセンダー館の方で抜け穴を見つけたとかなんとか……あっちには行くなって言ってるんだけどね」
あの辺りには赤印組が、と声を潜めるあたり、やはり彼女も赤印組には好意的ではないらしい。
ちょっとした情報を得て、クラウスは辞した。


そして鉄壁司祭、アレッサはというと町長の事務所に向かうところ。しかし先の二人と違って一人ではない。
捕虜になった疲労もあって遅れて出てきたシルダー・ホールウィンター・ザ・元人質と二人連れである。
何やら独自の思惑あって宿屋の客に話を聞いていたシルダーも、町長のもとに向かうのであればと同行を申し出た次第。

町長の事務所に向かったところまず見えるのは入り口前に大書された触書で、オーク退治に報酬を与える旨が書いてある。取り次ぎを頼んだところトントン拍子に迎え入れられた。
町長は町の住人曰く太っていて横柄で年寄りで愚か者。
だいたいその通りの人物が司祭の目の前に現れた。部屋に入ってきた二人をじろりと一瞥するなり町長、その大口を開いて言うには以下の如く。
「あんたが冒険者か。オーク退治を引き受けに来てくれたんだな、ありがたい。連中はトライボア街道の東を狩り場にしとるらしい。オークどもを蹴散らしてくれれば報酬に金貨100枚を用意しよう。充分な報酬だろう。さあ話はこれで全部だ。用件が終わったなら帰ってくれ」
一方的な宣言とともに二人を追い出すように手を振る町長。

ちょっとまじでこれはひどいんじゃないの?
あまりの態度にアレッサさんもおかんむりである。
その顔に鉄の微笑みを浮かべつつ、優雅に一礼アイサツを決めた。
「ドーモ、アレッサ・グランツシルトです」
さりげなく家紋をチラつかせる。コワイ! 読者の皆様にはご理解いただけるだろうか。家名と家紋、即ち貴族である。冒険者の…………貴族!
グランツシルト家は現状維持に長けた日和見当主が代々続く平穏な領主一族だが初代は武勲で名を馳せたと言う。だいたいその先祖返りがアレッサであった。

実際にはもうちょっと普通の挨拶だったが町長は権力ハラスメントの気配に怯え、その横柄さには翳りが見えた。

「オーク退治を受けるのは良いですが、まずは話を聞いていただけますか」

問いかけの振りをした命令であった。町長が身をすくめて拝聴するところ、アレッサは友人グンドレン・ロックシーカーがゴブリンに攫われた件を告げ、ゴブリンの対処を要求した。

「まあたしかにオークが野放しにはできんのと同じようにゴブリンも見過ごすわけにはいかんが……」

町長すっかり萎縮して頷くものの、ものごとには限界がある。要するに予算だ。金だ。無制限に対処の予算を組むことはできない。世知辛さにしばし哀しみの声が溢れ、町長には生暖かい目が注がれた。町長は銀行家であった。

すっかり背景となっていたシルダーが見かねて町長に近付いた。
「もしよければ、我々がいくらか支援してもいいんだが」

そそっとしばらくやりとりし、思案した町長も納得してゴブリン退治についても報酬が出ると宣言。告げられた金額はオーク退治の五倍で、人命を優先する意図が見えた。嘘です見えてません。これがメインクエストだからです。

ゴブリンによる被害の補填やら何やらも出た上でその金額だと言うことでアレッサもニッコリ。上に立つ責務を果たすものには優しいアレッサさんだ。

「ところで」
と口を挟んだのはシルダー・ホールウィンター。これ以上何か言うことがあったものか、アレッサが首を傾げているとシルダー続けて曰く人を探しているとのこと。
三十代で黒い顎髭の魔術師、シルダーの同僚で名前はイアルノ・アルブレック。しばらく前にこの辺りに来たはずだとつげたところ、町長は少し考えて頷いた。
だいたい二ヶ月ほど前くらいから姿を見ていない、たしかトレセンダー屋敷のあたりをうろついていたとか。

トレセンダー屋敷か。であればその付近を捜索すれば……」
シルダー氏が独り言ちると慌て始める町長。
「あっいや、何も言っとらんが? 聞き間違いでは? トレセンダー屋敷などには近付かぬが吉では?」
あからさまな狼狽えよう。トレセンダー屋敷と言えば赤印組の根城との噂もある辺り、アレッサの直感が輝く。

「そういえばその辺りには赤印組とかいうごろつきがいるとか言ってましたね」
「ははは面白いことを言うものだな。赤印組はたんなる傭兵であって、なんだ、その、ごろつきとかいうのではないよ君ィ。勇士の集いにつまらん喧嘩を吹っかけちゃならんぞいくら君が冒険者でもな」

あからさまに挙動不審、あからさまになんらかの忖度が働いているのであった。
よもやこの町長赤印組となんらかの繋がりを……? との訝しみも向けられたが、クレリックの神官アイが詳らかにするところ、この町長は小者で臆病で小胆な俗物であるため、できうる限り平穏に任期を終えるために赤印組の連中には見ない触れない関わらないという方針を打ち立てているものらしい。

「さあさあ君ィ! ゴブリンでもオークでも好きな連中を叩きのめして報酬を受け取りたまえよ。いいかね、この町で荒事なんて起こそうとするもんじゃないぞ」

あからさまに追い出しに掛かる町長である。アネッサ達は逆らわず、さらりと礼をして町長の事務所を後にした。


そしてルゥナ、荒野に生きるウォーロックは同じ頃、一人眠れる巨人亭に足を運んでいた。
えっ眠れる巨人亭? 赤印組の連中がいるという?
然様、ルゥナひとり、平然と情報収集と言う名の突撃である。
眠れる巨人亭の前には赤印組のごろつきが数人管を巻いていたが、それを尻目にするりと店に入り、無愛想なドワーフの女店主に注文を一つ。
「ミルクと一番甘い焼き菓子を」
返事もしない店主が背を向けたところで、どやどやとごろつき達が店に入ってくる。にやにやと下卑た嗤いを浮かべた粗野な連中だ。
すかした冒険者が気に入らないらしいごろつきたちは顔をよせ、悪ふざけをしかけてくるもルゥナは平然。当然これもまた気に入らない。
「おいテメェ、タフガイ気取りか?」
「タフガイがミルクなんか頼む?」
ルゥナが言うと、ごろつきの一人が店主の用意しているものを確認して哄笑を上げる。
「ハハァー! ミルクが呑みたけりゃおうちでママのおっぱいでも吸ってるんだな!」
ルゥナ、このハーフエルフの少女が馬鹿にされても動じないのを見ると、悪党のひとりが更にいきり立つ。
「だいたいよォ、この店に来たならまずオレ達に礼儀ってもんを見せなきゃよお。おら、這いつくばって頭を下げやがれ」
「どうやるのか、やってみせてよ」
「あア!?」
むしろ馬鹿にされたと見て、ごろつきは手近のタンカードを手に取った。でもってその中身、エールをルゥナに頭からひっ被せようと振り回す。
しかしそれが降りかかると思った瞬間、ウォーロックは姿を消していた。ミスティ・ステップの呪文である。

だいたいこういうシーンでは演出がパワーなので呪文の力は偉大である。

少し離れた場所に姿を現したルゥナを見て、ごろつきどもはおののいた。あからさまに魔術使いなのだ!
しかし暴力で売っている赤印組、こんなところで引いたら物笑いの種だ。おのおの武器を取り、一気呵成に襲いかかった!

そして次の瞬間、ルゥナの呪文が辺りを揺さぶる轟音を立て、赤印組のごろつきどもは意識を失った。シャターの呪いである。この恐るべき音の呪文は耳を劈き、岩すら砕くという。
「ろくでもない連中だ」
満足げなルゥナだが、しかし、その呪いは店にも当然のように大きな被害を出していた……!
カウンターの向こうで無言のままの店主を見ると、そっと代価を置いて、ごろつきもそのままにルゥナは店を出た。


ということで、町での遭遇は一区切り!
ここまでが大体前半でした。

後半へ続く。