雑然ワークス

プレイレポートを適当に。だいたいうろ覚え、内容はあやふや、台詞は捏造。

【迷宮キングダム】神聖ローマランドvs暴帝の訓練場その4(終)

 コロシアムへの道程は既に開かれていた。
 迷宮変動によって発生した追加の通路。
 その奥からは遠く人々の歓声が谺する。
 あたかも宮廷を待ち受けるが如きその様相に、配下たちは恐れ慄いた。
 

 


 
 
 コロシアムへの道も開けているが、小鬼エイトグあるいは傾国兵器料理人への道も直通ルートであった。
 彼らにとって唯一良かった点は、オリョクル回廊への突入を後回しにしたことだろう。
 これによって暴帝の訓練場で行うべき作業はボスとの戦闘と離脱を残すのみ。
 
「料理……」
 
 故にお料理騎士パルムのジョブスキルが働きを見せることなどない。ないはずである。
 
「ボスのHPは半減だしそこまで恐ろしい相手ではないはずだが……」
「撤退しなければ時間は間に合うはずだよね」
「逆に1クォーターでも無駄にすると即王国災厄表行きだから」
 
 パルムは笑顔であった。
 最早この時点で宮廷の最大の懸念事はマクシマス三世ではない。
 最も恐れるべきは時間の経過であり、それによる小鬼イートである。
 属州民を食べるとかいう噂が流れては大惨事。ローマ復興の夢も露と消えるだろう。
 
 
 不安げな民を引き連れ、マクシマスの待つコロシアムに向かう。
 狭い通路を乗り越えれば、そこはもうコロシアムである。
 差し込む明かりの向こうには、石造りの観覧席に囲まれたグラウンド。
 中央には暴帝の姿。彼こそがこの迷宮の主、マクシマス三世である。
 
「先手を打って攻めてきたか、神聖ローマランド。それとも自ら国を献上しに来たのか」
「傘下に降るというならともかく、国をくれてやる理由はない」
「僕らの国だからな」
「マクシマス殿! 何故こんな真似を」
「パルム・レイトか。我々には力が必要なのだ。戻ってこい」
 
 答えにならない答え。溢れ出るインセインオーラ。
 宮廷は頷きあい、狂王はもうダメだと結論付けた。
 
「一度恩を受けておきながら売り渡すなど、そんなことが出来るものか!」
「そうか。ではその国もろとも滅ぶのだな」
 
 マクシマスが一声を発し、それに応えて部下たちが駆けつけた。
 鍛えられた小鬼に兵士のようなものが馳せ参じ、陣を作る。
 ――ようなもの、とは?
 要するに記憶が薄れ地図にも敵の種類を書き込んでいなかったため詳細が分からないのだ。
 教訓:やろうと思ったことは早いうちに終わらせるべきであるし、必要なことは分かるように詳細を残しておくべきである。
 
「行くぞ諸君。裏切り者を切り伏せ、神聖ローマランドを蹴散らして我らの国を手にするのだ!」
「そうはいくか。このキャンプは我らの国土に変えてくれる」
 
 ざらりと集まったマクシマス卿の部下は鍛えに鍛えられた小鬼に兵士が総勢7名。
 その内訳は今日まで残る記録には記されていない。歴史の闇に消えたのだ。
 歴史の闇っていうか忘れただけです。GM用迷宮マップにはその部屋に8体の敵が存在するとのみ残され、具体的な内容は忘れ去られた。
 忘れ去ったといえばこの戦闘の内容もです。パルムがカッコよく決め、それほど危なげなく敵は殲滅されたように記憶している。
 記憶しているということはそうなったということである。
 言語を絶する優美華麗な戦いが繰り広げられ、7人の部下が次々と打ち破られたマクシマス三世は自らパルムに挑み、そして【だんびら】によって切り伏せられた。
 
「なぜだ、なぜこうなる……。我々には力が必要なのだ、あの栄華を取り戻すためにも……」
 
 そう口にして息絶えたマクシマス三世を、パルムは悲しげな表情で見送った。
 かつての王の見る影もない姿など、誰も見たくはなかったのだろう。そのうえそれを斬ったのが己であるなどと。
 
 それはさておき、迷宮の内部は大わらわであった。鍛えられかけた小鬼や付き従った兵士達が我先に逃げ出していく。
 王国にも満たぬ、たった一人のカリスマによってのみ統率された部隊である。その瓦解は早い。
 暴帝マクシマス三世を省みるものとて今はない。
 宮廷一行はそっとその波に乗り、ゴーフレットをパルムに見せぬよう帰路についた。
 部隊が無くば恐るべき侵略も無く、国難は一時去ったと言えよう。
 帰り際に砕け散った星を、配下たちはマクシマス公への弔いだと口々にささやきかわした。
 
 
 ジャーンジャーンジャーン(なんか壮麗なBGM)
 なんだかんだ言って国の脅威は消え、連れ帰ったゴーフレットの呪いも解け、王国には人々が増えて思いの外予算も手に入ったのであった。
 
 バロンは元老院の闇を愉しみ、スサノオとマリーは都市計画に夢をはせる。そして宮廷の片隅でパルムはチョコを想っていた。
 一時の平和であるが、しかし彼らのローマはより精強になり、少なくとも帝政ローマ公国のように滅びてはいない。安息の時である。
 
 だがしかし、彼らの思いもよらぬ戦乱がすぐそこまで差し迫っていた……。
 
 
 というのがだいたい一年前でした! はい!